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割と最近のつっこみ:


2008-01-31 [長年日記]

いろんな事をつなげてくれる本

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった(マルク・レビンソン/村井 章子) 読了。

面白え!これは必読!

なんで20世紀の終わりにグローバリゼーションが可能だったのか、もちろんいろんな要因があるんだけど、物流の観点からこんだけ鮮やかに圧倒的に説明してくれる素晴らしい本だ。

ロジスティクスっていう軍事用語がなぜ民間に使われるようになったのか、きっかけがベトナム戦争だっていう話は聞いた事はあったけど、あまり深く考えた事はなかったんだが、そうかこういう経緯があったわけですか。

しかしなんかこのコスト構造の激変って、どっかで聞いた事ある話だよなーと思っててぼーっと考えてたんだけど、中長距離幹線の物流におけるコンテナは、中長距離幹線の通信における光ファイバーと似た存在なのかもしれない。銅線では絶対に、衛星でもちょっと無理だったかもしれない物理的な信号伝送コストの劇的な変化をもたらした光ファイバーとなんだかかぶって見える。箱って言う意味ではパケット通信を思い出しやすいけど、東京〜大阪間や太平洋線のファイバーが中長距離の通信コストをほとんどフラットに変えちゃったというような意味で、ファイバーに近い気がする。実際、ファイバーがなければパケット通信は今ほど効率的ではないわけで。

ところで、そもそも僕がコンテナというものが何か世の中を変えてしまうものらしい、という事を最初に知らされたのは、新鶴見操車場がただの草原に変わってしまったときだった。鉄道貨物の輸送体系が、ヤード+車扱貨物列車から、直行のコンテナ列車に切り替わって、最新鋭のヤードだったはずの新鶴見操車場は役立たずになってしまった...という話。

この話は日本国内の輸送条件を前提とした話ではあるんだけど、それでも「荷物は大きい箱に入れて送ろう」というただそれだけのアイデアで、どんだけシステムを変えてしまうのかを漠然と知らされるのには十分だった。魅力的なtomixの2軸貨車模型は全部歴史の再現になって、東海道線には佐川のコンテナ積んだ貨物電車が深夜に疾走するようになったわけだけど。 (まあでも未だに日本の鉄道はサイズの関係もあって海上コンテナのフィーダー輸送が本格化しないから鉄道貨物のシェア下がってるんだけどな。残念ながら。)

1980年代のニューヨークやロンドンの港湾部が不調気味だったのと、新鶴見が野原になっちゃたのはなんだか似たような力学が働いていたわけですね。前者は立ち直ったけどな!

もう一つ身近な世界が変わった光景は、今われわれが「みなとみらい」と呼んでるあのあたりの事。横浜市歌に「今は百船百千舟」と歌われる港は、いまなんだかベイサイド観光地になっちゃってどこが港なんだろうと思うあのあたり。

僕は子供の頃のおぼろげな記憶に、あそこらへんがまだ現役の「港」の雰囲気を残していた頃の事を覚えているのです。昔の大桟橋あたりの今よりもっと港臭い雰囲気。埋め立て整地する前のなーんか猥雑な感じ。日本丸がきた頃はまだあそこが一部三菱のドックが残ってたような気がする。高島からは埠頭へと伸びる臨港貨物線が伸び(あれですよ、今は桜木町からワールドポーターズにいく途中にある鉄道橋と、山下公園の壁ですよ)、最後にC58が引いた記念列車が走ったりしていた頃のうすーい記憶。

横浜は僕が生まれるちょっと前ぐらいから、ちょうどコンテナ化していたんですよね。だから、なんだか自分のしっている横浜はどんどん港を打ち捨てていってるのに、横浜港の重要度は変わってないらしくて、なんかそんなもらしいというのはわかったけど、ピンと来ない部分があった。横浜は結局コンテナリゼーションに比較的適応する時に、「横浜港」は、高島や山下のあたりから、いつのまにか本牧、金沢、大黒に移ってるわけですよ。まあなんせ横浜市は広いから、どこまでいっても横浜港ではあるんだろうけど、高島や山下なら電車から見る事もできるけど、本牧、金沢、大黒が巨大な港湾システムを作っているのは、ベイブリッジが首都高にできて、あそこらへんを自分でよく車で走るようになるまであまり実感がなかった。あっちの方から16号にやってくるでっかい海上コンテナ積んだトラックがたまに思い出させてくれるぐらいだった。

その後海外にいっても、ニューヨークのマンハッタン南部やロンドンのテムズ川沿い、ボストンの港なんかが、一様に「ウォーターフロント」として、みなとみらいと同じように港湾機能を放棄して再開発の対象になっている様を見て、わかるようなわからないような気持ちになっていた。だいたい次のような理解をしていたのですが...

「都市が発展する」→「地価が上がるし、周りの人件費も上がる」→「港みたいな水辺ならどこでもいいようなものに使うと割にあわない」→「港として使われなくなる」→「再開発」

でもこの本によればそうじゃなくて、要するにこういう事なんですよね

  • 「港湾のコンテナ化」→「港湾施設の変化、大型化」→「旧港湾部が廃れる」
  • 「港湾のコンテナ化」→「労働集約的港湾労働者の減少」→「周辺の人口流出」→「旧港湾周辺住宅地域が廃れる」
  • 「港湾のコンテナ化」→「旧臨港工業地帯の相対的な地盤沈下」→「旧臨海工業地帯が廃れる」

結果、「旧港湾部を中心とした一体地域の地盤沈下」→「再開発の必要」→「港湾機能のイメージだけを使った商業/観光地域としての再開発」

とまあ、自分の身の回りにあった様々な「漠然とした理解」をこの本は一週間ちょっとで見事につないでくれたわけです。

御勧めいたします。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
spinn (2008-01-31 16:51)

ここまで熱く語られてはしかたない。<br>全くもってめちゃめちゃおもしろそうじゃないですか。<br>読みます!

とおやま (2008-02-02 02:53)

まあ、後半三分の一は個人的な思い入れなので万人に面白いかどうかは保証しかねます。あしからず。


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